日本は景気後退なのか? ~弱気バイアスの空気を越えて~

この記事は2023年8月23日に「第一生命経済研究所」で公開された「2023年6月の日銀短観予測」を一部編集し、転載したものです。 (画像=Dilok/stock.adobe.com)話題にならない景気拡大エコノミストの仕事は、あまり周囲の空気に流されずに、景気情勢を冷静にみることにある。メディアでは、現在が景気拡大期であることはほとんど報じられない。国民の間に根強い不安心理があるからだろう。何か経済ショックが起こると、不安心理を抱かせる見方が好まれて取り上げられているように感じられる。例えば、米国で中国恒大集団が法的整理が決まると、中国での不動産不況が話題になる。米国経済についても、金融引き締めをもう一段加速することが景気不安として語られる。日本にとって、海外経済の環境が今後は厳しくなっていくという雰囲気が喧伝される。しかし、本当にそうした先入観は正しいのだろうか。貿易統計からみると、前向きな動きが感じられる。実質輸出(輸出数量)は、2023年1月を大底にして、均してみると、徐々に反転上昇してきている(図表1)。中国向けは低調だが、欧州・米国向けの自動車が伸びている。こうした輸出の動向は、日本の生産活動全体に波及していくだろう。生産サイクルの変化を占う上で、よく使用される出荷・在庫バランスの推移でみても、2023年6月にはプラスに浮上している(図表2)。これは、在庫循環から考え
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